建設業の特定技能受け入れを徹底解説―JACやCCUSの登録から実務までの完全ガイド

建設業界では深刻な人手不足が続いており、即戦力となる外国人材の確保が急務となっています。2019年4月に創設された特定技能制度は、一定の技能と日本語能力を持つ外国人を労働力として受け入れる仕組みであり、建設分野は制度開始当初から1号・2号の両方が対象となる重要な分野です。

建設分野で特定技能外国人を受け入れるためには、建設業法の許可取得に加えて、建設技能人材機構(JAC)への加入や建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が必須となります。本記事では、受け入れのメリットから具体的な手続き、運用上のポイントまで、実務担当者が知っておくべき情報を網羅的に解説します。

建設業で特定技能を受け入れるメリット

建設業における特定技能外国人の受け入れは、単なる人員補充にとどまらない多くのメリットをもたらします。人手不足の解消はもちろん、職場環境の改善や企業競争力の強化にもつながる可能性があります。

ここでは、建設企業が特定技能制度を活用することで得られる具体的なメリットを4つの観点から詳しく解説します。

人手不足をすばやく補える

特定技能制度は即戦力となる外国人材を受け入れる仕組みであり、人手不足に悩む建設企業にとって有効な解決策となります。技能実習制度が人材育成を目的としているのに対し、特定技能は「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を持つ人材を労働力として直接受け入れる制度です。

2024年6月末時点で約31,853人の特定技能1号外国人が建設分野で就労しており、受け入れ数は年々増加しています。政府は2029年度末までに約76,000人の受け入れを見込んでおり、建設業界の人材確保において重要な役割を果たすことが期待されています。

現場の技能レベルを底上げできる

特定技能外国人は技能試験に合格した人材であり、一定水準以上の技術力を持っています。建設分野特定技能1号評価試験では、学科試験と実技試験の両方で65%以上の正答が求められ、合格率は約39%と一定の選別がなされる水準であり、これを通過していることは技術力の裏付けとなります。

技能実習2号を良好に修了した人材は試験が免除されるため、すでに日本の現場で2年以上の実務経験を積んだ即戦力として期待できます。複数の企業からは「仕事を覚えるのが早い」「2年もすればほとんどの外国人が十分な力をつけてくれる」といった肯定的な評価が報告されています。

採用コストと稼働効率のバランスがとれる

特定技能1号の在留期間は通算5年であり、長期的な人材活用が可能です。さらに特定技能2号に移行すれば在留期間の上限がなくなり、家族帯同も認められるため、より安定した雇用関係を築けます。

以下の表は、特定技能制度における1号と2号の主な違いをまとめたものです。

項目 特定技能1号 特定技能2号
技能水準 相当程度の知識・経験 熟練した技能
在留期間 通算5年まで 上限なし
家族帯同 不可 可能
求められる役割 指導者の監督下で作業 班長として工程管理

このように段階的なキャリアパスが設計されているため、企業は育成した人材を長期的に活用でき、採用コストの回収と稼働効率の向上を両立させることが可能です。

地域社会や職場の多様性が向上する

外国人材の受け入れは職場に新しい視点や活力をもたらし、組織全体の活性化につながります。実際に受け入れ企業からは「日本人の職人も負けていられないと励み、社内の競争力が高まった」という声も聞かれています。

特定技能外国人の多くはベトナム、フィリピン、インドネシアなど東南アジア諸国の出身であり、異なる文化背景を持つ人材との協働は、職場のコミュニケーション能力向上や国際感覚の醸成にも寄与します。地方の建設現場においては、地域社会の活性化という側面からも注目されています。

建設業の特定技能受け入れで必要な要件と手続き

建設分野で特定技能外国人を受け入れるためには、他の分野にはない固有の要件と手続きが存在します。建設業法の許可はもちろん、JAC(建設技能人材機構)への加入やCCUS(建設キャリアアップシステム)への登録が義務付けられています。

続いて、対象職種から申請手続きの流れまで、受け入れに必要な要件と具体的なステップを詳しく解説します。

対象職種と受け入れ可能な人材の範囲

建設分野の業務区分は2022年8月の制度改正により、「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3つに統合されました。この統合により、特定技能外国人が従事できる業務範囲が大幅に拡大しています。

各業務区分に含まれる主な職種は以下の通りです。

業務区分 主な対象職種 作業内容
土木 型枠施工、コンクリート圧送、トンネル推進工、建設機械施工、土工、鉄筋施工、とび、海洋土木工 土木施設の新設・改築・維持・修繕
建築 型枠施工、左官、コンクリート圧送、屋根ふき、土工、鉄筋施工、内装仕上げ、表装、とび、建築大工、建築板金 建築物の新築・増築・改築・修繕
ライフライン・設備 配管、建築板金、冷凍空気調和機器施工、熱絶縁施工 電気通信・ガス・水道等の整備

この業務区分の統合により、例えば土木区分の試験に合格すれば土木工事全般に従事できるようになり、人材配置の柔軟性が向上しています。

在留資格と特定技能評価試験の概要

特定技能1号の取得には、技能試験と日本語能力試験への合格が必要です。ただし、技能実習2号を良好に修了した場合は両方の試験が免除されます。

建設分野特定技能1号評価試験の概要は以下の通りです。

  • 学科試験:30問・60分、真偽法および2〜4択式、65%以上で合格
  • 実技試験:20問・40分、同形式、65%以上で合格
  • 試験区分:土木、建築、ライフライン・設備の3区分

日本語能力については、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上の合格が求められます。特定技能2号を目指す場合は、より高度な試験に合格するとともに、班長としての実務経験も必要となります。

受け入れ企業に求められる要件と責務

建設分野で特定技能外国人を受け入れる企業は、複数の固有要件を満たす必要があります。これらは国土交通省告示により定められており、軽微な工事のみを扱う企業も例外ではありません。

受け入れ企業が満たすべき主な要件は以下の通りです。

  1. 建設業法第3条の許可を受けていること
  2. 建設キャリアアップシステム(CCUS)に事業者登録していること
  3. 特定技能外国人もCCUSに技能者登録すること
  4. JAC(建設技能人材機構)に加入していること
  5. 同等の技能を持つ日本人と同等以上の報酬を支払うこと
  6. 技能習熟に応じた昇給制度を設けること
  7. 月給制で報酬を支払うこと

JACへの加入方法は、正会員である建設業者団体を通じた間接加入と、賛助会員としての直接加入の2つがあります。2025年11月現在、JACは58の建設業者団体で構成されています。

申請から雇用開始までの具体的な流れ

特定技能外国人の受け入れは、建設特定技能受入計画の認定申請から始まります。この計画は国土交通大臣への申請が必要であり、認定までに1ヶ月半から2ヶ月程度を要します。

申請から雇用開始までの流れを以下にまとめました。

  1. 前提条件の整備(建設業許可、CCUS登録、JAC加入)
  2. 外国人材の選定と雇用条件の決定
  3. 建設特定技能受入計画の作成と国土交通大臣への認定申請
  4. 認定取得後、特定技能雇用契約の締結
  5. 出入国在留管理庁への在留資格申請
  6. 在留資格取得後、雇用開始

技能実習から特定技能へ移行する場合は、技能実習計画の修了期日の6ヶ月前から申請が可能です。それ以外の場合は雇用開始予定日の約6ヶ月前から申請できます。

必要書類とよくある不備の対処法

建設特定技能受入計画の認定申請には、多岐にわたる書類の準備が必要です。書類の不備は審査の遅延につながるため、事前の確認が重要です。

主な必要書類を以下にまとめました。

書類カテゴリ 必要書類 注意点
企業関係 登記事項証明書、建設業許可証の写し 許可の有効期限を確認
雇用関係 雇用契約書、雇用条件書、賃金台帳 月給制での記載が必須
労働条件 36協定届、変形労働時間協定書、年間カレンダー 最新のものを用意
外国人関係 CCUSカードの写し、重要事項事前説明書 母国語での説明が必要

よくある不備としては、報酬額が同等技能の日本人と比較して適切でないケース、昇給条件が明確に記載されていないケースなどがあります。申請前に社会保険労務士や行政書士などの専門家に確認を依頼することで、スムーズな認定取得につながります。

建設業で特定技能外国人を受け入れる運用上のポイントと課題解決

特定技能外国人の受け入れは、認定取得がゴールではありません。採用後の適切な運用こそが、外国人材の定着と活躍、ひいては企業にとってのメリット最大化につながります。

さらに、採用から定着支援まで、現場で実践すべき運用上のポイントと、発生しやすい課題への対処法を解説します。

採用と面接で押さえるべきポイント

特定技能外国人の採用では、技能水準と日本語能力の確認に加えて、長期的な就労意欲を見極めることが重要です。特定技能は転職が可能な在留資格であるため、企業と外国人材の双方にとってミスマッチを防ぐ面接が求められます。

面接時に確認すべきポイントは以下の通りです。

  • 保有資格と実務経験の具体的な内容
  • 日本語でのコミュニケーション能力(日常会話レベル)
  • 来日の動機と将来のキャリアプラン
  • 勤務地や労働条件への理解と同意
  • 家族構成や母国への帰国予定の有無

面接は可能であれば通訳を介して母国語でも実施し、労働条件や生活環境について十分な説明を行うことで、入社後のミスマッチを防ぐことができます。

労働条件や賃金設定で注意すること

特定技能外国人の報酬は、同等の技能を持つ日本人と同等以上であることが法令で義務付けられています。この基準を満たさない場合、建設特定技能受入計画の認定を受けることができません。

賃金設定における重要なポイントを以下にまとめました。

項目 要件 備考
支払形態 月給制が必須 日給制・時給制は不可
報酬水準 同等技能の日本人と同等以上 賃金台帳で比較
昇給制度 技能習熟に応じた昇給が必須 昇給条件を明記
休業手当 天候等による休業時は60%以上支給 欠勤扱い不可

比較対象となる日本人がいない場合は、周辺地域の建設技能者の平均賃金や設計労務単価を参考に報酬を設定します。不当に低い賃金設定は認定拒否の原因となるため、慎重な検討が必要です。

安全衛生教育と現場での技能指導の方法

建設現場における安全衛生教育は、特定技能外国人に対しても日本人と同様に実施する義務があります。JACでは無料のオンライン特別教育や技能講習を提供しており、これらを積極的に活用することが推奨されます。

効果的な技能指導のためのポイントは以下の通りです。

  • 作業手順書を母国語または図解で用意する
  • 実演を交えた指導で理解度を高める
  • 危険作業については特に丁寧に説明する
  • 理解度を確認するための定期的なフォローアップを行う
  • 先輩技能者とのペア作業で実践的なスキルを習得させる

受け入れ後講習はFITS(国際建設技能振興機構)が主催しており、JACによる受講料の全額支援が受けられます。新規入国の特定技能外国人には必ず受講させることが求められています。

日本語支援と職場のコミュニケーション対策

職場での円滑なコミュニケーションは、特定技能外国人の定着と活躍に直結する重要な要素です。JACでは外国人のニーズや日本語レベルに合わせた無料の日本語講座を提供しています。

職場でのコミュニケーション改善に効果的な施策を以下に挙げます。

  • JACの無料日本語講座を活用した継続的な学習支援
  • 現場で使う専門用語リストの作成と共有
  • 翻訳アプリやコミュニケーションツールの導入
  • 日本人従業員向けの異文化理解研修の実施
  • 定期的な面談による悩みや要望の把握

FITSが運営する母国語相談ホットラインでは、外国人が受け入れ企業を介さずに直接相談できる体制が整っています。この窓口の存在を外国人材に周知することで、問題の早期発見と対応が可能になります。

定着支援と離職防止の具体的施策

特定技能は転職が認められた在留資格であるため、外国人材の定着には積極的な取り組みが欠かせません。育成に投資した人材が他社に流出するリスクを軽減するためには、働きやすい環境づくりが重要です。

定着率向上に効果的な施策を以下にまとめました。

施策カテゴリ 具体的な取り組み 期待される効果
キャリア支援 資格取得支援、特定技能2号への昇格支援 将来展望の明確化
生活支援 住居確保、生活手続きのサポート 生活の安定
交流促進 社内イベント、同郷者との交流機会 帰属意識の向上
経済的支援 一時帰国支援、各種手当の充実 経済的満足度向上

JACの資格取得等奨励金制度では、対象資格を取得した特定技能外国人と受け入れ企業それぞれに10万円が支給されます。こうした制度を活用し、外国人材のモチベーション向上と技能レベルアップを同時に図ることが効果的です。

トラブル事例と法令遵守のための対応

特定技能で認められた業務以外の業務に従事させることは「資格外活動」に該当し、不法就労助長罪に問われる可能性があります。法令遵守は企業の存続にかかわる重大な問題です。

注意すべき法令違反の事例と対策は以下の通りです。

  • 認定された業務区分以外の作業への従事(資格外活動)
  • 報酬の不当な減額や未払い
  • 労働時間の上限超過
  • 社会保険への未加入
  • 支援計画に基づく支援の不実施

FITSによる巡回指導は年1回以上実施され、労働関係法令や出入国管理法に基づく書面確認とヒアリングが行われます。日頃から適正な就労環境を維持し、必要書類を整備しておくことが重要です。

失踪防止のためには、定期面談の実施、給与明細の丁寧な説明、24時間対応可能な緊急連絡窓口の設置など、外国人材との信頼関係構築に努めることが効果的です。

まとめ

建設業における特定技能外国人の受け入れは、深刻な人手不足を解消する有効な手段であり、即戦力となる人材を長期的に活用できる制度です。受け入れにあたっては、建設業法の許可取得、JAC(建設技能人材機構)への加入、CCUS(建設キャリアアップシステム)への登録が必須となります。

建設特定技能受入計画の認定には、同等技能の日本人と同等以上の報酬支払いや技能習熟に応じた昇給制度の整備など、複数の要件を満たす必要があります。申請から認定までには約2ヶ月を要するため、計画的な準備が求められます。

受け入れ後は、安全衛生教育や日本語支援、定着支援など継続的なサポートが重要です。JACやFITSが提供する各種支援制度を積極的に活用し、外国人材が安心して働ける環境を整えることで、企業と外国人材の双方にとって実りある雇用関係を築くことができます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次