「国境炭素税とは?地球温暖化対策の新たな一手をわかりやすく解説」

近年、地球温暖化対策の新たな一手として注目されているのが、国境炭素税(Carbon Border Adjustment Mechanism:CBAM)です。国境炭素税には、各国の気候変動対策強化の促進といった効果が期待される一方で、WTOルールとの整合性や途上国・新興国からの反発など、克服すべき課題も残されています。本記事では、国境炭素税が地球温暖化に対してどのような効果を与えるかか、解説していきます。

目次

国境炭素税とは? – 定義と仕組み

近年、地球温暖化対策の一環として注目を集めている政策の一つが、

国境炭素税(Carbon Border Adjustment Mechanism:CBAM)
です。国境炭素税は、気候変動対策に積極的に取り組む国と、そうでない国との間で生じる不公平な競争条件を是正し、カーボンリーケージを防止することを目的としています。ここでは、国境炭素税の定義と仕組みについて詳しく解説します。

炭素国境調整措置(CBAM)とは

国境炭素税は、正式には

炭素国境調整措置(CBAM)
と呼ばれています。CBAMは、自国の気候変動対策によって生じる国内企業の競争力低下を防ぐため、

気候変動対策の程度が不十分な国からの輸入品に対して、その炭素排出量に応じた課税を行う
仕組みです。これにより、国内企業と海外企業の競争条件を平等にし、カーボンリーケージを防止することが期待されています。

輸出品への還付制度

国境炭素税には、

輸出品に対する還付制度も含まれています
。自国の企業が気候変動対策を行った上で製品を輸出する際、その製品に課された炭素税相当額を還付する仕組みです。これにより、自国の企業が国際市場で競争力を維持できるようになります。

国境炭素税の対象品目と税率

国境炭素税の対象となる品目や税率は、各国の状況によって異なります。

EUでは、2023年から段階的に国境炭素税の導入を開始する予定であり、当初は鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力の5品目が対象となります
。税率については、EUの炭素価格に基づいて設定される見込みです。今後、対象品目や税率の拡大が検討される可能性もあります。

国境炭素税は、気候変動対策の推進とカーボンリーケージ防止を目的とした画期的な政策ですが、その導入には課題も残されています。国際貿易への影響や、途上国・新興国からの反発など、克服すべき問題は少なくありません。しかし、地球温暖化対策の重要性が増す中、国境炭素税は今後さらに注目を集めていくことでしょう。

国境炭素税の目的と背景

国境炭素税は、気候変動対策に積極的に取り組む国と、そうでない国との間で生じる不公平な競争条件を是正し、

カーボンリーケージを防止することを主な目的としています
。さらに、国境炭素税の導入により、各国の気候変動対策を推進することも期待されています。ここでは、国境炭素税の目的と背景について詳しく解説します。

カーボンリーケージの防止とは

カーボンリーケージとは、

ある国が厳しい気候変動対策を実施した結果、対策が緩い国へ産業が移転してしまい、世界全体での温室効果ガスの削減効果が低下してしまう現象
を指します。国境炭素税は、このカーボンリーケージを防止するために導入が検討されています。

具体的には、気候変動対策に積極的な国の企業が、対策が不十分な国の企業と比べて競争上不利になることを防ぐために、

対策が不十分な国からの輸入品に課税を行います
。これにより、国内企業と海外企業の競争条件が平等になり、カーボンリーケージのリスクが低減されます。

気候変動対策の推進

国境炭素税のもう一つの重要な目的は、

各国の気候変動対策を推進することです
。国境炭素税が導入されると、気候変動対策が不十分な国の企業は、輸出先で追加の課税を受けることになります。このため、これらの企業は、自国の気候変動対策を強化するインセンティブを持つことになります。

また、国境炭素税の導入により、

気候変動対策に積極的な国の国内対策の効果が高まることも期待されています
。カーボンリーケージのリスクが低減されることで、国内の炭素価格を引き上げることが可能になり、企業のさらなる排出削減が促進されます。

各国の排出量取引制度との関係

国境炭素税は、各国の排出量取引制度とも密接に関係しています。排出量取引制度を導入している国では、国内の炭素価格が設定されています。国境炭素税では、

この炭素価格と輸出国の炭素価格の差に基づいて、輸入品への課税額が算出されます

したがって、国境炭素税の導入は、各国の排出量取引制度の効果的な運用にも寄与すると考えられています。国境炭素税により、国内の炭素価格と国際的な炭素価格の差が縮小し、排出量取引制度のさらなる発展が期待されます。

EUでの導入計画と段階的なスケジュール

国境炭素税の導入に向けた動きは、特にEUで活発化しています。

EUは2021年に国境炭素税の制度概要を発表し、2023年から段階的な導入を開始する予定です
。当初は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力の5品目が対象となる見込みです。

EUの国境炭素税導入は、他の国々にも大きな影響を与えると予想されています。EUは世界有数の経済圏であり、多くの国々と貿易関係を持っているためです。

EUの動向は、他国の気候変動対策や国境炭素税導入の議論を加速させる可能性があります

国境炭素税は、気候変動対策とカーボンリーケージ防止という2つの重要な目的を持った政策です。その導入には課題も残されていますが、地球温暖化対策の切り札として注目が集まっています。特にEUでの導入計画は、国際的な気候変動対策の議論に大きな影響を与えるでしょう。

国境炭素税の今後の展望

国境炭素税の導入は、気候変動対策の新たな一手として注目を集めています。EUでの導入計画を皮切りに、今後、国境炭素税はさらなる拡大の可能性を秘めています。ここでは、国境炭素税の今後の展望について詳しく解説します。

対象品目と対象国の拡大の可能性

現在、EUが導入を予定している国境炭素税は、

鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力の5品目を対象としています
。しかし、将来的には対象品目の拡大が検討される可能性があります。また、国境炭素税を導入する国も増加すると予想されます。

EUの動向に呼応して、他の先進国や新興国が国境炭素税の導入を検討する可能性が高まっています
。対象品目と対象国の拡大は、国境炭素税の効果をさらに高めることにつながるでしょう。

CO2排出量算出範囲の拡大(Scope2,3への拡張)

国境炭素税の導入当初は、

製品の製造過程で直接排出されるCO2(Scope1)のみが対象となる見込みです
。しかし、将来的には

間接的な排出(Scope2,3)も対象に含められる可能性があります
。Scope2は購入した電力や熱の使用に伴う排出、Scope3はサプライチェーン全体での排出を指します。CO2排出量算出範囲の拡大は、国境炭素税の効果をより包括的なものにすると期待されています。

他国での導入の動向

EUに続き、他の国々でも国境炭素税の導入が検討されています。

アメリカ、カナダ、イギリスなどの先進国では、国境炭素税の導入に向けた議論が活発化しています
。また、

中国やインドなどの新興国も、自国の産業競争力を維持するために国境炭素税の導入を検討する可能性があります
。国境炭素税が世界的に広がることで、気候変動対策の推進とカーボンリーケージ防止の効果がさらに高まると期待されています。

カーボンニュートラル実現に向けた役割

国境炭素税は、各国のカーボンニュートラル実現に向けた重要な役割を果たすと考えられています。

国境炭素税の導入により、各国の気候変動対策が加速し、脱炭素化に向けた取り組みが促進されます
。また、国境炭素税は、

国際的なカーボンプライシングの調和にも寄与する可能性があります
。各国の炭素価格が収斂することで、グローバルな気候変動対策の効果が高まることが期待されています。

国境炭素税は、気候変動対策の新たな一手として大きな注目を集めています。対象品目と対象国の拡大、CO2排出量算出範囲の拡張、他国での導入など、今後の展開が期待されています。国境炭素税がカーボンニュートラル実現に向けて重要な役割を果たすためには、国際的な協調と各国の積極的な取り組みが不可欠です。国境炭素税の動向から目が離せません。

まとめ

国境炭素税とは、気候変動対策に積極的な国と消極的な国との間の不公平な競争条件を是正し、カーボンリーケージを防止することを目的とした政策です。EUが2023年から段階的な導入を予定しており、鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力の5品目が当初の対象となります。国境炭素税には、各国の気候変動対策強化の促進といった効果が期待される一方、WTOルールとの整合性確保や途上国・新興国の理解獲得など、克服すべき課題も残されています。今後、対象品目や対象国の拡大、CO2排出量算出範囲の拡張など、さらなる展開が予想される国境炭素税は、カーボンニュートラル実現に向けた重要な役割を担うでしょう。

参考文献

グリラボ
国境炭素税(CBAM、炭素国境調整措置)とは? 仕組みや目的について解説! グリラボは地球と社会と人の未来をつなぐことをテーマに、エネルギーの未来について研究し発信するメディアです。ビジネス、テクノロジー、カルチャーなど多様な領域を切り...
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