1. ファネル分析とは

ファネル分析という言葉を一度は耳にしたことがあるかもしれません。しかし、その具体的な意味や活用方法について詳しく知っている方は少ないかもしれません。本章では、まずはファネル分析の基本的な定義から明らかにします。

1.1 ファネル分析の定義

ファネル分析は、特定の目標に向けてユーザーがどのように進行または離脱していくかを追跡し、分析する手法です。ファネルとは漏斗を意味し、ユーザーが最終的な目標へと狭まっていく過程を表しています。

例えば、サイト訪問者がいかにして商品購入者となるかの流れを追うのが一例となります。この分析を通じて、顧客ロスが起きやすい段階を特定し、改善していきます。

なお、ファネル分析はマーケティングだけではなく、ユーザーエクスペリエンス(UX)の改善にも役立ちます。

1.2 ファネル分析の目的

ファネル分析の主な目的は、ユーザーの行動パターンを理解し、コンバージョンを最適化することです。具体的には、離脱ポイントの特定最適化が重要視されます。

離脱ポイントとは、ユーザーが目標達成の途中で行動を離脱するポイントのことを指します。離脱率が高い場合、その原因を探り、取り組みを改善することでコンバージョン率の向上を目指します。逆に離脱率が低いということは、その段階は比較的問題が少なく滑らかに進んでいると言えます。

具体的な施策としては、サイト改善や広告最適化、ターゲット設定の見直しなどがあります。

1.3 ファネル分析の活用方法

ファネル分析を活用する一つの方法は、Webサイトの訪問者をコンバージョンまでの各段階で見ることです。具体的には、訪問 > 商品ページ閲覧 > カートに追加 > 購入という流れにおいてそれぞれの段階でのユーザー数や離脱率を把握します。

また、ユーザーがどのような経路でコンバージョンに至ったかを追跡することも可能です。これによって、どのマーケティングチャネルが最も有効であるかなども明らかになります。

また、具体的な施策としてはサイト改善や製品改善、広告最適化などに活用できます。

1.4 ファネル分析のメリットとデメリット

ファネル分析の最大のメリットは、コンバージョン過程を可視化し、ユーザーの行動や離脱の理由を具体的に理解できることです。これにより、サービス改善の方向性を確定したり、新たなマーケティング施策を設計するための貴重な情報を提供します。

一方で、ファネル分析にはデメリットも存在します。一つは、全てのユーザー行動を捉えることは難しく、分析結果にバイアスが生じる可能性があることです。例えば、ユーザーが複数のデバイスやブラウザを使い分けている場合、全ての行動を追跡することは難しいです。

また、ファネル分析だけでは原因と結果を必ずしも明確につなげることは出来ず、他の分析手法との組み合わせが必要となります。

2. ファネル分析の基本的な考え方

ファネル分析とは、消費者が商品を購入するまでの顧客行動を「ステージ別」に見て、最終的に購入に至る流れを可視化したものです。
ここでは、その基本的な考え方を深掘りします。

2.1 ファネルモデルの理解

まず始めに、ファネルモデルについて理解を深めましょう。
ファネルとは、広い部分から狭い部分へと物が流れ込む形状のことを言います。これを顧客の流れに例えたものがファネルモデルとなります。
つまり、情報が集まり始める『訪問者』の段階から始まり、最終的に注文や購入へと絞り込む様子を表しています。

2.2 ステップ別の離脱率

次にステップ別の離脱率について見ていきます。
ファネルモデルの各ステップで、顧客がどの程度離脱しているかを見ることで、どのステップで問題があるのかを把握することができます。
これにより、問題解消のための施策を練ることが可能となります。

2.3 CVR(コンバージョン率)の計算方法

ファネル分析において重要となるのがCVR(コンバージョン率)です。
CVRは、全体の訪問者数の中で何人が目的のアクション(例えば購入やお問い合わせ)を達成したかをパーセントで表したものです。
CVR = (コンバージョン数 ÷ 訪問者数)× 100(%)という計算式で求められます。

2.4 ファネル分析とKPIの設定

最後にファネル分析とKPIの設定について説明します。 KPI(Key
Performance Indicator)とは、ビジネスの成果を測定するための指標です。
ファネル分析を行う上では、具体的な目標や指標(KPI)が無ければ何を改善すべきかが見えにくくなります。
したがって、ファネル分析を行うときは、どのステップでどれだけのCVRを目指すかなど、明確なKPIを設定することが重要となります。

3. ファネル分析の進め方

ファネル分析を進めるためには、以下のステップが必要です。
ファネル分析の進め方は結果をどのように利用するかによって変わりますが、基本的な進め方は一緒です。

このパートでは、初めてのファネル分析に挑戦する方々を対象に、一つ一つのステップについて詳しく解説していきます。

それぞれのステップについてしっかりと理解し、自社の状況や目標に合わせてカスタマイズすることで最善の結果を得ることができます。

3.1 ゴールの設定

まず、ファネル分析を行う目的やゴールを明確に決定しましょう。これは分析の全体方向性を決める非常に重要なステップです。

ゴールは具体的で達成可能なものにしましょう。例えば、ウェブサイトの訪問者が特定のページを訪れるまでのプロセスを分析したい、あるいは、アプリ内でユーザーが特定のアクションを行うまでの流れを理解したい、といった具体的なゴールが考えられます。

このステップでゴールが明確になれば、次のステップで何に焦点を当てるべきかがはっきりします。

3.2 ステップの設定

ゴールを設定したら次は、ユーザーがゴールに至るまでのステップを設定します。これはファネル分析の具体的な枠組みを作り出す作業となります。

ここでは、ユーザーが順を追って経由するであろうポイントを一つ一つ設定します。例えば、製品ページへの訪問、カートへの商品追加、購入確定といった具体的なアクションがステップとなります。

これらのステップを適切に設定することで、ユーザーの行動を詳細にトラッキングし、どこで離れてしまうのかを明確に把握できます。

3.3 データの収集と可視化

設定したゴールとステップに応じたデータを収集し、それを可視化します。データの収集はアナリティクスツールを用いることで容易に行うことができます。

データを集めたら、それを明解な図や表にまとめることで、ステップ間の流れや、どのステップでユーザーが離脱してしまうのかを一目で理解することが可能になります。

この可視化は、より具体的な施策を立てやすくなるだけではなく、他のチームメンバーやステークホルダーと共有しやすくなるため、コミュニケーションの助けともなります。

3.4 結果の解析と施策立案

最後に、収集したデータを分析し、その結果から何が問題となっているのか、どのように改善すべきなのかを検討します。このステップが最も重要で、結果に基づいた具体的な施策を立案します。

分析の結果、特定のステップで大きくユーザー数が減っていることが明らかになれば、そのステップが改善の重点項目となります。

それぞれの結果に基づいて施策を立案し、それを実行することで、ユーザー体験は向上し、ビジネスのパフォーマンスは改善されることでしょう。

4. ファネル分析に関する注意点

ファネル分析は、ウェブサイトのユーザー行動を洞察し、コンバージョン率の改善に貢献する強力なツールです。しかし、適切に活用するためには、いくつかの注意点を把握しておく必要があります。

主要な注意点には、サンプル数の確保、各ステップの間隔、外部要因の考慮、そして継続的なデータ分析が挙げられます。

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

4.1 適切なサンプル数の確保

サンプル数は、ファネル分析の信頼性を決定する重要な要素です。サンプル数が少なすぎると、正確な分析が難しくなります。

各ステップのユーザー数が十分でなければ、コンバージョン落ち込みの真の原因を見つけることが難しくなります。しかし、一方でサンプル数を無理に増やそうとすると、不適切な策を取ってしまう恐れもあります。

これを避けるためには、常に「適切な」サンプル数の確保に努め、集めたデータが信頼性のあるものであることを確認しなければなりません。

4.2 各ステップの間隔

各ステップ間の時間間隔は、ユーザーの行動を理解するために非常に重要なポイントです。間隔が長すぎると、ユーザーが離脱してしまう可能性があります。

その一方で、間隔が短すぎてもユーザーが適切に情報を処理できず、結果的に行動に移せない場合があります。各ステップの適切な間隔設定は、確認と最適化を繰り返すことで見つかります。

このステップ間の時間設定の最適化は、コンバージョン率向上に直結しますので、細心の注意を払って実施してください。

4.3 外部要因の考慮

ファネル分析では、外部要因が内部データに影響を及ぼすことを常に念頭に置くことが重要です。例えば、セールスキャンペーンや季節変動など、これらの要因がユーザーの行動に影響を及ぼす可能性があります。

そのため、分析の結果が必ずしも実際のユーザー行動やビジネスの成功を正確に反映しているとは限らないことを理解することが重要です。

外部要因を適切に考慮しつつ分析を行うことで、より実践的な洞察を得ることが可能になります。

4.4 継続的なデータ分析

ファネル分析の成功のためには、継続的なデータ分析が欠かせません。市場の動向やユーザーの行動パターンは絶えず変化します。

だからこそ、一度設定したファネルが永遠に有効であるとは限らず、定期的に見直しを行い、必要な場合には改良を行う必要があります。

最新の情報を反映させたファネル分析によって、ビジネスに有益な洞察を継続的に得ることが可能になります。

5. ファネル分析の実践例

5.1 Webサイト訪問者の行動分析

ファネル分析を用いて、Webサイト訪問者の行動を詳細に分析することが可能です。訪問者がどのページで離脱しているのか、どのコンテンツに時間を費やしているのか等、ユーザービヘイビオアから深い洞察を得ることができます。

その結果、Webサイトの最適化につながるような、具体的な改善策を見つけ出す事ができます。これにより、訪問者の滞在時間の延長や、CV(コンバージョン)率の向上などに繋がります。

また、ファネル分析は新規の訪問者とリピーターの行動パターンを比較することにも使用され、それぞれの訪問者グループのユーザビリティを向上させる施策を検討することができます。

5.2 ユーザー登録フローの改善

ユーザー登録フローもまた、ファネル分析での最適化の対象となります。各段階でどれほどのユーザーが離脱し、最終的にどれほどのユーザーが完了に至るかをチェックすることで、フローの難易度や煩雑さを把握することができます。

特に入力エラーが発生するページや、離脱率が高いページなどは注視すべきポイントです。これらの情報をもとに、UIやUXの改善、情報入力の促進策などを考えることが出来ます。

良質なユーザーフローを設計することで、ユーザーのストレスを軽減させ、サイトの使いやすさを向上させることが可能になります。

5.3 購入ファネルの最適化

ファネル分析はオンラインストアの購入フローの改善にも使われます。商品の閲覧からカートへの追加、購入までの各ステップでのユーザー離脱を分析することで、購入の妨げとなる要素を見つけ出すことが出来ます。

また、購入フロー中の特定の「ハンドル」、つまり判断を迫るステップでは、ユーザーがどのような選択をするか、その選択がコンバージョンにどのように影響するのかを調査することも可能です。

これらの分析により、購入フローの最適化を行うことができ、結果として売上の向上に寄与します。

5.4 広告の効果分析

効果的な広告キャンペーンの設計は、ファネル分析の助けを借りて大きく改善することができます。広告から訪れたユーザーの行動をトラッキングすることで、広告の効果に関する詳細な洞察を得ることが出来ます。

広告からの流入数、その後の行動、最終的なコンバージョン数等を分析することで、広告のパフォーマンスを計り、最適化を図ることが出来ます。

これにより、広告予算の最適な配分や、さらなる広告効果の向上策を見つけ出すことが可能となります。