日本を代表する総合電機メーカーとして長年にわたり電機業界をリードしてきた東芝ですが、近年は不正会計問題や原子力事業の失敗などにより深刻な経営危機に陥りました。その要因としては、ガバナンスの欠如や経営判断の誤りなどが指摘されています。しかし、東芝は現在、事業ポートフォリオの見直しやコーポレートガバナンスの強化、新たな成長戦略の推進など、様々な再生への取り組みを進めており、その行方が注目されています。かつての輝きを取り戻すことができるのか、東芝の再生への道のりに迫ります。
東芝の歴史と栄枯盛衰
東芝は、日本を代表する総合電機メーカーの一つであり、その歴史は明治時代にまで遡ります。創業から現在に至るまで、東芝は数々の困難を乗り越えながら、電機業界をリードする企業として成長を遂げてきました。ここでは、東芝の歴史と栄枯盛衰について振り返ります。
東芝の創業と戦前の発展
東芝の起源は、1875年に創業された田中製造所にあります。当初は電信機器の製造を行っていましたが、やがて白熱電球の製造にも着手し、1890年には国産初の白熱電球の製造に成功しました。その後、1899年に芝浦製作所と改称し、重電機器の製造へと事業を拡大していきます。
1939年には、芝浦製作所と東京電気が合併し、東京芝浦電気(現・東芝)が誕生しました。戦前から戦中にかけて、東芝は日本の軍需産業を支える重要な役割を担っていました。
戦後の復興と高度経済成長期の躍進
第二次世界大戦後、東芝は民需産業へと転換を図ります。1950年代から1960年代にかけての高度経済成長期には、家電製品や産業用機器の需要が急増し、東芝は日本経済の発展に大きく貢献しました。
この時期、東芝は数々の革新的な製品を世に送り出しています。代表的なものとしては、以下のようなものがあります。
年代 | 製品 |
---|---|
1950年代 | 電気洗濯機、電気冷蔵庫 |
1960年代 | カラーテレビ、ルームエアコン |
1970年代 | マイコン応用製品、VTR |
バブル経済崩壊後の苦難と再編
1990年代に入り、バブル経済の崩壊とともに、東芝は深刻な経営危機に直面します。半導体事業の不振や、過剰投資の影響で、1990年代後半には巨額の損失を計上することになりました。
この危機を乗り越えるため、東芝は以下のような構造改革に着手しました。
- 不採算事業からの撤退
- 半導体事業の分社化
- グループ経営の強化
2000年代に入ると、東芝は原子力事業に注力するようになります。しかし、2006年に発覚した会計不正問題や、2011年の東日本大震災による原発事故の影響で、東芝は再び経営危機に陥ることになりました。
現在、東芝は不正会計問題の再発防止と、原子力事業の縮小など、抜本的な改革に取り組んでいます。今後、東芝がどのように再生を果たしていくのか、注目が集まっています。
東芝の経営危機と要因
かつて日本を代表する総合電機メーカーとして君臨していた東芝は、近年、深刻な経営危機に直面しています。その要因は複合的ですが、主に以下の3点が挙げられます。
不正会計問題の発覚と信用失墜
2015年、東芝は長年にわたる不正会計問題が発覚し、社会的信用を大きく失墜しました。過去の決算において、利益の水増しや損失の先送りが行われていたことが明らかになり、東芝は証券取引等監視委員会から課徴金納付命令を受けました。この問題は、東芝のガバナンス体制の脆弱性を浮き彫りにし、株価の大幅な下落を招きました。
原子力事業の失敗と巨額損失
東芝は、2006年に米国のウェスチングハウス社を買収し、原子力事業の拡大を図りました。しかし、2011年の東日本大震災以降、原発の安全性に対する懸念が高まり、各国で原発政策の見直しが進むなか、東芝の原子力事業は頓挫しました。さらに、ウェスチングハウス社が手掛けた米国の原発プロジェクトの建設コストが膨れ上がり、東芝は2017年に同社を連結対象から外すことを決定。これにより、東芝は9000億円超の巨額損失を計上することになりました。
ガバナンスの欠如と経営判断の誤り
東芝の経営危機の根底には、ガバナンスの欠如と経営判断の誤りがあります。不正会計問題に象徴されるように、東芝では長年にわたり、経営陣による牽制機能が働いていませんでした。また、原子力事業への過度な依存や、ウェスチングハウス社の買収など、リスクを十分に検討しない経営判断が行われてきました。こうした一連の失策が、東芝の財務基盤を大きく毀損することになったのです。
東芝の経営危機は、日本の大企業のガバナンスの在り方に警鐘を鳴らす事例として、大きな注目を集めました。今後、東芝がこの危機からどのように再生を果たしていくのか、その行方が注視されています。
東芝の再生への取り組み
東芝は、近年の経営危機を乗り越えるべく、様々な再生への取り組みを進めています。ここでは、その主な取り組みについて詳しく見ていきましょう。
事業ポートフォリオの見直しと選択と集中
東芝は、再生に向けて事業ポートフォリオの見直しを進めています。具体的には、以下のような取り組みを行っています。
- 不採算事業や非中核事業からの撤退
- エネルギー事業や社会インフラ事業への経営資源の集中
- メモリ事業の売却による財務体質の改善
これらの取り組みにより、東芝は競争力のある事業に経営資源を集中し、収益性の向上を図っています。
コーポレートガバナンスの強化と経営刷新
東芝は、不正会計問題の反省を踏まえ、コーポレートガバナンスの強化に努めています。具体的には、以下のような施策を実施しています。
施策 | 内容 |
---|---|
取締役会の改革 | 社外取締役の増員、取締役会の監督機能の強化 |
監査体制の強化 | 内部監査部門の独立性の確保、監査委員会の機能強化 |
コンプライアンスの徹底 | コンプライアンス教育の充実、内部通報制度の整備 |
また、東芝は経営陣の刷新にも取り組んでいます。2021年には、社外出身の綱川智社長が就任し、新たな経営体制のもとで再生への道筋を描いています。
新たな成長戦略の推進と企業価値向上
東芝は、再生に向けて新たな成長戦略の推進にも注力しています。具体的には、以下のような取り組みを行っています。
- エネルギー事業の強化(脱炭素社会への貢献、再生可能エネルギーの拡大など)
- デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速(AI・IoTの活用、デジタルソリューションの提供など)
- 海外事業の拡大(アジア市場での事業展開、グローバルパートナーとの協業など)
これらの成長戦略を推進することで、東芝は新たな収益源の確保と企業価値の向上を目指しています。
東芝は、事業ポートフォリオの見直しやガバナンスの強化、新たな成長戦略の推進など、様々な再生への取り組みを進めています。今後、これらの施策がどのように実を結んでいくのか、東芝の再生への道のりが注目されます。
まとめ
東芝は、創業以来、日本の電機業界をリードしてきましたが、近年は経営不振に陥りました。しかし、東芝は不正会計問題を乗り越え、原子力事業の分社化や非中核事業の売却など、様々な改革に取り組んでいます。家電事業では、最新技術を搭載した魅力的な製品を次々と発表し、消費者の支持を集めています。東芝は、これからも品質と技術力を武器に、世界のトップ企業を目指して再生への道を歩んでいくでしょう。