証券業界において、経営目標の達成度を測る上で重要な指標であるKGI(Key Goal Indicator)。しかし、KGIを適切に設定し、関連するKPIを管理することは容易ではありません。KGIとKPIの違いを理解し、自社のビジョンや戦略に合致したKGIを選定することが求められます。また、設定したKGIは定期的にレビューし、必要に応じて修正することも重要です。本記事では、証券業界におけるKGIの基本概念から、具体的な設定方法、注意点まで詳しく解説します。KGIを効果的に活用することで、証券会社の持続的な成長と発展を実現しましょう。
KGIとは何か?基本的な概念と定義を理解しよう
KGIは、企業経営において目標達成度を測る重要な指標です。証券業界でも、KGIを正しく設定し、モニタリングすることが非常に重要となります。本記事では、KGIの基本的な概念と定義について解説し、証券業界におけるKGIの設定方法やポイントについて詳しく見ていきます。
KGIの意味と由来を解説
KGIは、Key Goal Indicator(キー ゴール インジケーター)の略称で、日本語では「重要目標達成指標」や「経営目標達成指標」などと訳されます。KGIは、企業が設定した最も重要な目標の達成度を測るための指標であり、経営層が特に注目すべき指標といえます。
KGIという言葉は、1990年代にインテルの社員であったアンディ・グローブ氏が提唱したとされています。グローブ氏は、経営目標の達成に向けて、重要な指標に焦点を当てることの重要性を説いたのです。以来、KGIは多くの企業で導入され、経営管理に活用されるようになりました。
KGIとKPIの違いを明確化
KGIとよく混同されるのが、KPI(Key Performance Indicator)です。KPIは「重要業績評価指標」と訳され、業務プロセスにおける重要な指標を指します。KGIが最終的な目標達成度を測る指標であるのに対し、KPIは目標達成のための過程を評価する指標だと言えます。
例えば、証券会社の場合、KGIには以下のような指標が設定されることが多いです。
- 純営業収益
- 経常利益
- ROE(自己資本利益率)
- 顧客満足度
一方、KPIには以下のような指標が該当します。
- 新規口座開設数
- 株式売買代金
- 投資信託販売額
- コールセンターの応答率
KPIはKGI達成のための重要な要素ですが、あくまでKGIを実現するための手段であることを理解しておく必要があります。
証券業におけるKGIの重要性
証券業界は、金融市場の動向や規制環境の変化など、外部要因の影響を大きく受ける業界です。そのため、証券会社は明確な経営目標を設定し、その達成度を適切に測定・管理することが非常に重要となります。
例えば、証券会社がROEを重要なKGIと定めた場合、以下のようなKPIを設定し、モニタリングすることが考えられます。
KGI | 関連するKPI |
---|---|
ROE |
|
ROEを向上させるには、営業利益率を上げる、資産を効率的に活用する、適切な資本構成を維持するなどの取り組みが必要です。これらのKPIを適切に管理することで、最終的なKGIであるROEの改善につなげることができるのです。
また、証券業界では顧客満足度もKGIとして重視されることが多いです。顧客満足度を高めるためのKPIとしては、以下のような指標が考えられます。
- 顧客アンケートのスコア
- 取引継続率
- 顧客一人当たりの売買代金
- クレーム対応率
これらのKPIを継続的に改善することで、顧客満足度という重要なKGIの達成につなげていくことが可能となります。
以上のように、証券業界におけるKGIは、経営目標の達成度を測る上で非常に重要な役割を果たします。KGIを適切に設定し、関連するKPIを継続的にモニタリング・改善することが、証券会社の持続的な成長と発展のカギとなるのです。
証券業でKGIを設定する際の注意点
証券業界においてKGIを設定する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらの点に留意することで、より効果的なKGI設定が可能となり、経営目標の達成に向けた取り組みを加速させることができます。以下では、証券業でKGIを設定する際の3つの主要な注意点について詳しく解説します。
KGIは具体的かつ測定可能な指標であること
KGIを設定する際には、具体的で測定可能な指標を選ぶことが重要です。曖昧な目標や定性的な評価基準では、進捗状況の把握や目標達成度の評価が難しくなります。例えば、「収益性の向上」という目標は抽象的すぎるため、具体的な数値目標(営業利益率○%など)を設定する必要があります。
また、KGIは定期的に測定・評価できる指標でなければなりません。データの収集や分析に多大な労力を要する指標は、KGIとしての実効性に欠けます。証券業界では、以下のような指標がKGIに適しています。
- ROE(自己資本利益率)
- 営業利益率
- 顧客満足度スコア
- 新規口座開設数
- 株式売買代金
これらの指標は、いずれも数値化が可能で、定期的な測定・評価が比較的容易です。KGI設定の際には、このような具体的かつ測定可能な指標を選ぶことが肝要です。
KGIは会社のビジョンや戦略と整合性があること
KGIは、会社のビジョンや戦略と整合性のある指標でなければなりません。組織の目指す方向性と乖離したKGIを設定しても、真の意味での目標達成にはつながりません。証券会社の経営層は、自社のビジョンや戦略を踏まえた上で、それらの実現に資するKGIを設定する必要があります。
例えば、「業界トップクラスの顧客満足度を実現する」というビジョンを掲げる証券会社の場合、顧客満足度スコアをKGIに設定することが適切でしょう。一方、「グローバル市場でのプレゼンス拡大」を戦略とする証券会社であれば、海外顧客数や海外売上高比率などがKGIの候補として挙げられます。
KGIとビジョン・戦略との整合性を保つためには、以下のようなステップを踏むことが有効です。
- 会社のビジョンと戦略を明確に定義する
- ビジョンと戦略の実現に必要な要素を洗い出す
- 洗い出した要素の中から、KGIに適した指標を選定する
- 選定したKGIが、ビジョンや戦略と整合しているか検証する
このプロセスを経ることで、会社の目指す方向性と一致したKGIを設定することができるのです。
KGIは定期的にレビューし、必要に応じて修正すること
一度設定したKGIも、経営環境の変化に応じて定期的にレビューし、必要であれば修正することが大切です。事業戦略の変更や市場動向の変化などにより、当初設定したKGIが適切でなくなる場合があります。こうした状況においては、KGIの見直しを検討しなければなりません。
KGIの妥当性を確認するために、以下のような観点からレビューを行うことが推奨されます。
- KGIは引き続き会社のビジョンや戦略と整合しているか
- KGIの達成状況は順調か、あるいは乖離が生じているか
- KGIを達成するために設定したKPIは適切に機能しているか
- 経営環境の変化を踏まえ、新たなKGIの設定が必要ではないか
レビューの結果、KGIの修正が必要と判断された場合には、速やかに新たな指標を設定する必要があります。その際、前述の注意点(具体性、測定可能性、ビジョンや戦略との整合性)を踏まえることが重要です。
また、KGIの修正に当たっては、組織内の関係者との合意形成も欠かせません。特に、現場の従業員にKGIの変更の理由と意義を丁寧に説明し、理解を得ることが肝要です。KGIの浸透と実践には、全社一丸となった取り組みが不可欠だからです。
以上のように、証券業界でKGIを設定する際には、具体的かつ測定可能な指標を選び、会社のビジョンや戦略と整合性を保ち、定期的なレビューと必要な修正を行うことが重要です。これらの注意点に留意しつつ、適切なKGIを設定・運用することで、証券会社は経営目標の着実な達成と持続的な成長を実現することができるのです。
証券業におけるKGIの具体例
証券業界では、経営目標の達成度を測るために様々なKGIが設定されています。ここでは、証券業におけるKGIの具体例を、定量的な指標と定性的な指標に分けて紹介します。
新規口座開設数や預かり資産額などの定量的なKGI
証券業界で広く用いられている定量的なKGIとしては、以下のような指標が挙げられます。
- 新規口座開設数: 一定期間に新たに開設された証券口座の数を示す指標です。新規顧客の獲得状況を把握するために重要なKGIと言えます。
- 預かり資産額: 証券会社が顧客から預かっている資産の総額を指します。顧客基盤の拡大や顧客との取引深耕の度合いを測る上で重要な指標です。
- 株式売買代金: 一定期間における株式の売買金額の合計を示します。証券会社の主要な収益源の一つである株式売買動向を把握するために欠かせないKGIです。
- 投資信託販売額: 投資信託の販売金額の合計を表します。投資信託の販売は、株式売買と並ぶ証券会社の主要な収益源であり、重要なKGIの一つと言えます。
これらの定量的なKGIは、証券会社の業績を数値で明確に示すことができるため、経営層が重視する指標となっています。
顧客満足度やブランド認知度などの定性的なKGI
証券業界では、定量的な指標だけでなく、定性的な指標もKGIとして設定されることがあります。代表的な例としては、以下のような指標が挙げられます。
- 顧客満足度: 顧客アンケートなどを通じて、証券会社に対する顧客の満足度を測定する指標です。顧客満足度は、顧客ロイヤルティの向上や口コミによる新規顧客の獲得に大きな影響を与えるため、重要なKGIの一つと考えられています。
- ブランド認知度: 証券会社のブランドがどの程度認知されているかを示す指標です。ブランド認知度の向上は、新規顧客の獲得や既存顧客との取引深耕につながるため、重要なKGIと言えます。
- 従業員満足度: 従業員アンケートなどを通じて、従業員の職務満足度や会社へのエンゲージメントを測定する指標です。従業員満足度の高さは、サービス品質の向上や生産性の向上につながるため、KGIとして設定される場合があります。
これらの定性的なKGIは、数値化が難しい側面もありますが、証券会社の持続的な成長に大きな影響を与える要因であるため、重要視されています。
証券業の各部門や部署ごとのKGIの例
証券会社では、全社レベルのKGIだけでなく、各部門や部署ごとにもKGIが設定されることが一般的です。以下では、証券業の主要な部門・部署におけるKGIの例を紹介します。
部門・部署 | KGIの例 |
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リテール営業部門 |
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ホールセール営業部門 |
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資産運用部門 |
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コンプライアンス部門 |
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各部門や部署のKGIは、その役割や責任範囲に応じて設定されます。部門・部署レベルのKGIを適切に設定し、モニタリングすることで、全社的なKGIの達成につなげることができるのです。
以上のように、証券業界では、定量的な指標と定性的な指標を組み合わせ、全社レベルと部門・部署レベルでKGIを設定することが一般的です。KGIを適切に設定し、関連するKPIを継続的に改善することが、証券会社の持続的な成長と発展のカギとなります。
まとめ
証券業界においてKGIは、経営目標の達成度を測る上で非常に重要な指標です。KGIを適切に設定し、関連するKPIを継続的に改善することが、証券会社の持続的な成長と発展のカギとなります。KGIを設定する際は、具体的かつ測定可能な指標を選び、会社のビジョンや戦略と整合性を保つことが重要です。また、定期的なレビューと必要な修正も欠かせません。証券業界では、新規口座開設数や預かり資産額などの定量的指標と、顧客満足度やブランド認知度などの定性的指標を組み合わせ、全社レベルと部門・部署レベルでKGIを設定するのが一般的です。KGIを効果的に活用し、証券会社の経営目標達成に役立てましょう。